消えゆく印字装置:ドットインパクトプリンター

消えゆく印字装置:ドットインパクトプリンター

ITの初心者

先生、『ドットインパクトプリンター』って最近聞かないんですけど、どんなプリンターなんですか?

ITアドバイザー

いい質問だね。ドットインパクトプリンターは、小さな点の集合体で文字や図形を作るプリンターだよ。針のようなピンが紙の裏側からインクリボンを叩いて点を打ち、それをつなげることで印刷するんだ。

ITの初心者

なるほど。点を打つんですね。今のプリンターみたいにインクを吹き付けるんじゃなくて?

ITアドバイザー

その通り。インクを吹き付けるインクジェットプリンターやレーザープリンターと違って、ドットインパクトプリンターはカーボン紙を使って複写を作るのが得意だったんだ。今ではあまり見かけないけど、昔は伝票印刷などでよく使われていたんだよ。

dot impact printerとは。

点で模様を作るように印字するプリンターについて説明します。このプリンターは、細かい針が並んだヘッドを使って、インクを染み込ませたリボンを叩くことで紙に点を打ち、文字や図形を表現します。タイプライターのように動作音が大きく、印字のきめ細やかさを上げるのが難しいため、インクを吹き付ける方式やレーザー光を使う方式のプリンターが普及するにつれて、ほとんど使われなくなりました。ちなみに、「ドットマトリックスプリンター」とも呼ばれます。

印字の仕組み

印字の仕組み

印字とは、紙などの媒体に文字や図形などを写し取ることを指します。その方法は様々ですが、ここでは点の集合体で表現する印字方法について説明します。点で印字する代表的な機器の一つに、ドットインパクトプリンターがあります。

ドットインパクトプリンターは、小さな針のようなピンが多数並んだ印字ヘッドを使って印字を行います。この印字ヘッドは、紙に直接文字を描くのではなく、紙の裏側からインクリボンを叩きつけることで印字を行います。ピンがリボンを叩くと、その部分のインクが紙に転写され、小さな点が紙に記録されます。

印字ヘッドには、縦横にずらりとピンが並んでおり、どのピンを叩くかを細かく制御することで、文字や図形を描きます。一つ一つの点は非常に小さいですが、これらの点を組み合わせることで、様々な模様や文字を作り出すことができます。例えば、「あ」という文字を印字したい場合は、「あ」の形に点が並ぶように、ピンを制御します。

ピンの動きは電磁石によって制御されています。電磁石は、電流を流すと磁力を発生させ、電流を止めると磁力が消える性質を持っています。この性質を利用して、必要なピンだけが紙に接触するように精密に調整しています。不要なピンが紙に接触すると、意図しない場所に点が印字されてしまうため、正確な制御が重要です。

この印字方法は、タイプライターと同様に物理的な衝撃を利用しているため、カーボン紙を挟むことで複数枚の複写印刷が容易にできます。これは、一点に力が集中するため、その力がカーボン紙を通して下の紙にも伝わるからです。例えば、伝票を複数枚作成する必要がある場合などに便利です。

騒音の問題

騒音の問題

点字印刷機は、文字を打ち出す際に小さな針が紙とインクの帯を叩く仕組みのため、どうしても大きな動作音が発生してしまいます。特に、大量の書類を印刷する際には、この動作音が周囲に響き渡り、問題となることがあります。静かな執務室では、この音が他の仕事に集中している人の邪魔になる可能性も高く、近年では騒音による問題を避けるため、より静かなインクを吹き付ける印刷機や光を使う印刷機が選ばれる傾向にあります。

点字印刷機特有の騒音は、「カチャカチャ」「ダダダ」といった断続的な音や、連続した駆動音など、印刷の量や機種によって様々です。この音は、印刷機の内部にあるハンマー機構が紙を叩く音や、紙送り機構が動作する音などが組み合わさって発生します。特に古い機種や、低価格帯の機種では、これらの音が大きく響きやすい傾向にあります。

静かな環境を求められる職場では、この騒音は作業効率の低下に繋がる可能性があります。例えば、電話での会話や、会議に集中しにくくなるだけでなく、騒音によるストレスから、従業員の健康状態に悪影響を与える可能性も懸念されます。また、住居が密集した地域で点字印刷機を使う際には、近隣住民への配慮も必要不可欠です。特に夜間や早朝に印刷を行う場合は、騒音によって周囲の住民の安眠を妨げないように、時間帯を考慮する、防音対策を施すなど、十分な注意が必要です。

このように点字印刷機の騒音問題は、職場環境や近隣住民との関係に影響を与える可能性があるため、印刷機の選定や使用方法には十分な配慮が必要です。

項目 内容
点字印刷機の騒音発生メカニズム 針が紙とインクの帯を叩く機構による
騒音の種類 「カチャカチャ」「ダダダ」といった断続音や連続駆動音など、印刷量や機種によって様々
騒音の原因 ハンマー機構が紙を叩く音、紙送り機構の動作音
騒音の影響
  • 周囲への迷惑(執務室での集中阻害、近隣住民への騒音)
  • 作業効率低下(電話、会議への集中阻害)
  • 従業員の健康状態への悪影響(ストレス)
騒音対策
  • 静音タイプの印刷機(インク噴射式、光を使う印刷機など)の選定
  • 印刷時間帯の配慮
  • 防音対策
その他 古い機種や低価格帯の機種は騒音が大きい傾向

解像度の限界

解像度の限界

点で模様を描く印刷機は、点の密集度合いによって印刷の細かさが決まります。点を描くための針の数を増やすことで、より細かい表現が可能になりますが、技術的な限界が存在します。液体を噴射する印刷機や光を使う印刷機ほど、きめ細やかな印刷は難しいのです。そのため、写真や複雑な模様などを美しく印刷するのには向きません。文字についても、小さな文字や細い線はぼやけてしまうことがあり、見づらくなる可能性があります。

点で模様を描く印刷機の仕組みを具体的に見てみましょう。この印刷機は、インクを染み込ませたリボンに針を打ち付けて、紙に点を刻むことで印刷を行います。針の数が多いほど、より多くの点を密集させて印刷できるため、細かさが増します。しかし、針の数を無限に増やすことはできません。針を作るための部品の小ささや、針を正確に制御する技術に限界があるからです。また、針が多すぎると、印刷速度が遅くなったり、故障しやすくなったりするといった問題も発生します。

昨今では、より高画質な印刷物が求められる場面が増えています。鮮明な写真や精緻な図表は、情報をより分かりやすく伝えるために欠かせません。点で模様を描く印刷機は、このようなニーズに応えることが難しいという課題を抱えています。印刷の細かさの限界は、この印刷機の利用範囲を狭める大きな要因となっています。特に、デザイン性や視認性が重視される資料作成などにおいては、他の印刷方式が選ばれることが多くなっています。そのため、点で模様を描く印刷機は、主に伝票印刷など、高い画質が求められない用途で使われています。

項目 内容
印刷方式 点描式(針で点を刻む)
細かさ 針の数に依存、技術的限界あり
利点 恐らく低コスト(本文中には明記なし)
欠点 写真、複雑な模様、小さい文字、細い線は苦手
技術的課題 針の小型化、精密制御、印刷速度、故障率
用途 伝票印刷など、高画質が不要な場面
今後の展望 高画質ニーズへの対応は難しい

過去の主力製品

過去の主力製品

かつて、事務処理や帳票出力の世界では、点で文字や図形を描く衝撃式印字機が主役でした。この印字機は、何枚もの複写を一度に印刷できるという大きな利点を持っていました。また、印刷にかかる費用も安く、当時の技術水準から考えると印刷速度も速い部類に入りました。特に、伝票や請求書といった複写が必須となる書類の作成にはなくてはならない存在でした。

この印字機は、複数枚重ねた用紙に専用のインクリボンを打ち付けて色を転写する仕組みでした。この仕組みのおかげで、一度に何枚もの複写を作成することが容易だったのです。また、インクリボンも比較的安価だったため、印刷コストを抑えることが可能でした。加えて、当時の他の印刷方式と比較すると、印字速度も速いという特徴がありました。そのため、大量の書類を迅速に印刷する必要のある事務処理の現場では重宝されました。

さらに、この印字機は耐久性が高いという点も高く評価されていました。製造現場や倉庫など、粉塵が多い場所でも安定して動作することができました。これは、印字方式が機械的に単純で、電子部品への依存度が低かったためです。そのため、悪条件の環境下でも故障しにくいという信頼性がありました。

しかし、技術の進歩は止まりません。時代が進むにつれて、より高性能で静かな印字機が登場し始めました。点で絵を描く方式特有の動作音も大きく、騒音問題も指摘されるようになってきました。結果として、衝撃式印字機は徐々に主役の座を譲り渡し、現在では限られた用途で使用されるのみとなっています。

項目 内容
方式 衝撃式印字(点で文字や図形を描く)
メリット
  • 複数枚の複写を一度に印刷可能
  • 印刷費用が安い
  • 当時の技術水準では印刷速度が速い
  • 耐久性が高い
デメリット
  • 動作音が大きい
用途 伝票、請求書など複写が必須となる書類の作成
その他
  • インクリボンを打ち付けて色を転写する仕組み
  • 製造現場や倉庫など、粉塵が多い場所でも安定して動作
  • 現在では限られた用途で使用される

現在の利用状況

現在の利用状況

今では、インクジェットやレーザーといった印刷機が広く使われるようになり、点で模様を作る印刷機の需要は大きく減りました。家庭や多くの職場では、手軽にきれいな印刷ができるインクジェットやレーザーが主流となっています。しかし、点で模様を作る印刷機にも独自の強みがあり、今でも特定の場面で使われています。

例えば、何枚も重ねて複写する伝票を印刷する場合です。カーボン紙などを挟んだ伝票に、点で模様を作る印刷機で印刷すると、その圧力で一度に複写ができます。これは、インクジェットやレーザーでは難しい芸当です。また、工場や倉庫など、温度や湿度の変化が激しい場所、あるいはほこりが多い場所でも、点で模様を作る印刷機は活躍します。これらの印刷機は構造が単純で丈夫なため、多少の環境の変化にも負けず、安定して動き続けます。インクジェットやレーザーは精密な機械なので、このような厳しい環境では故障しやすいという弱点があります。

ミシン目で切り離せるタイプの用紙、いわゆる連続帳票への印刷も、点で模様を作る印刷機が得意とするところです。連続帳票は、大量の伝票や帳簿を印刷する際に使われますが、点で模様を作る印刷機は、その高速な印刷と安定した紙送りが特徴です。インクジェットやレーザーでは、連続帳票への印刷に対応していない機種も多く、対応していても印刷速度が遅かったり、紙詰まりを起こしやすいといった問題があります。

さらに、熱で文字を浮かび上がらせる感熱紙への印刷にも適しています。点で模様を作る印刷機は、感熱紙に圧力をかけることで、鮮明な印字を実現します。

このように、点で模様を作る印刷機は、需要こそ大きく減りましたが、特定の用途においては替えがたい存在です。今後、技術がさらに進歩すれば、これらの用途も他の印刷機でカバーできるようになるかもしれません。しかし、現時点では、点で模様を作る印刷機ならではの利点が、様々な現場を支えています。

印刷方式 利点 欠点 主な用途
インクジェット/レーザー 手軽できれいな印刷 複写が難しい、精密なため環境変化に弱い、連続帳票印刷に苦手 家庭、オフィス
点で模様を作る印刷機 複写伝票への印刷、環境変化に強い、連続帳票印刷に得意、感熱紙に鮮明な印字 需要が少ない 伝票印刷、工場・倉庫、連続帳票、感熱紙

別称

別称

点で文字や模様を描く印字装置であるドットインパクトプリンターには、『ドットマトリクスプリンター』という別の呼び名があります。この二つの名称は、どちらも同じ装置を指しており、意味するところは全く同じです。では、なぜ二つの呼び名が存在するのでしょうか。それは、この印字装置の仕組みが深く関わっています。

この印字装置は、小さな点の集まりで文字や模様を作り上げています。針がリボンを叩き、紙に点を打ち付けることで印字するため、『ドット(点)』という言葉が使われています。そして、その点が集まって、縦横に並んだ形、つまり『行列』を『マトリクス』とも呼ぶため、『ドットマトリクス』という表現も生まれたのです。つまり、『ドットインパクト』は印字の仕組み、『ドットマトリクス』は点の並び方に着目した名称と言えるでしょう。

普段の話の中では、『ドットインパクトプリンター』と呼ぶことが一般的です。文字数が少なく、言いやすいという点が理由の一つと考えられます。一方、専門的な説明や機器の説明書など、より正確な表現が求められる場面では、『ドットマトリクスプリンター』が使われることが多いです。これは、『マトリクス』という言葉が、点の並び方という技術的な側面を的確に表現しているためです。

どちらの名称を耳にしても、同じ印字装置のことを指していると理解していれば、何も問題ありません。それぞれの名称の由来や使われ方を理解することで、より深くこの印字装置の特性を把握することができます。

名称 由来 説明 使用場面
ドットインパクトプリンター 印字の仕組み(点で印字を叩きつける) 一般的に使われる名称 日常会話
ドットマトリクスプリンター 点の並び方(点の行列) 技術的な側面を的確に表現 専門的な説明、機器の説明書