NATで複数機器をインターネットへ

NATで複数機器をインターネットへ

ITの初心者

先生、「NAT」ってよく聞くんですけど、何のことかよくわかっていないんです。簡単に教えてもらえますか?

ITアドバイザー

そうですね。「NAT」とは、簡単に言うと、家の中のたくさんのコンピューターが、インターネットに繋がるための出口を一つだけ使うための技術です。家の外から誰かが入ってくるときに、どのコンピューターに繋げばいいかを教えてくれる案内係のような役割もしています。

ITの初心者

なるほど。家の外への出口が一つだけというのは、どういうことですか?

ITアドバイザー

インターネットに繋がるには、世界中で一つしかない特別な住所(グローバルアドレス)が必要です。でも、家の中のコンピューター全部にそんな特別な住所を与えるのは大変ですよね。だから、家の外に出るときは一つの住所をみんなで共有して、家の中にはそれぞれのコンピューター用の別の住所(プライベートアドレス)を使うんです。NATは、この二つの住所を変換してくれる役割をしています。

NATとは。

会社のネットワークや家庭内ネットワークにつながっている複数のパソコンで、インターネットに接続するためのアドレスをみんなで一緒に使う技術のことです。この技術は『NAT』と呼ばれています。家庭内ネットワークにつながっているパソコンそれぞれが持っている、個別のアドレスと、みんなで一緒に使うインターネット用のアドレスを、相互に変換することで、複数のパソコンが同じインターネットアドレスを使えるようにしています。

NATとは

NATとは

家庭や会社など、限られた場所で使う情報機器の集まりを、地域情報網と呼びます。この網の中では、それぞれの機器に、その場限りの識別番号である私用住所が割り当てられます。この番号は、世界中で共通して使われる住所である、全体住所とは異なります。全体住所は、インターネットのような広大な情報網で、それぞれの機器を特定するために使われます。私用住所は、地域情報網の中だけで通用し、そのままではインターネットに接続できません。

そこで登場するのが、網住所変換という技術です。これは、複数の機器が一つの全体住所を共有して、インターネットに接続できるようにする仕組みです。地域情報網の中の機器がインターネットにアクセスしようとすると、網住所変換装置が、その機器の私用住所と、送りたい情報の行き先を記録します。そして、全体住所を使って情報をインターネットに送ります。

インターネットから返信が来ると、網住所変換装置は、記録しておいた情報をもとに、どの機器に送るべきかを判断し、私用住所に変換して該当の機器に届けます。このように、網住所変換によって、多くの機器が一つの全体住所を共有してインターネットに接続できるようになります。全体住所は数が限られているため、この技術は全体住所を有効に活用するために大変重要です。また、外部から地域情報網内の機器に直接アクセスできないため、セキュリティ対策としても有効です。網住所変換によって、インターネット接続のコスト削減と安全性の向上が実現しています。

近年、情報機器の爆発的な増加に伴い、全体住所の枯渇が深刻化しています。この問題を解決するため、新しいIPv6という仕組みに徐々に移行しつつあります。IPv6では、全体住所の数が大幅に増えるため、網住所変換の必要性は薄れていくと考えられます。しかし、セキュリティ対策としての役割は依然として重要であり、今後も様々な形で活用されていくでしょう。

項目 説明
地域情報網 家庭や会社など、限られた場所で使う情報機器の集まり
私用住所 地域情報網内で機器に割り当てられる、その場限りの識別番号
全体住所 インターネットのような広大な情報網で、機器を特定するための世界共通の住所
網住所変換(NAT) 複数の機器が一つの全体住所を共有してインターネットに接続できるようにする技術
網住所変換装置(NATルータ) 私用住所と全体住所の変換を行う装置
NATのメリット – 全体住所の有効活用
– セキュリティ対策(外部からの直接アクセスを防ぐ)
– インターネット接続コストの削減
IPv6 全体住所の枯渇問題を解決するための新しいIPアドレス体系
IPv6とNAT IPv6導入によりNATの必要性は減少するが、セキュリティ対策としての役割は残る

NATの仕組み

NATの仕組み

家庭や会社などの小さな網の中で使われている、それぞれの機器に割り当てられた住所(プライベートアドレス)を、インターネットで使われている世界中で共通の住所(グローバルアドレス)に変換する仕組みのことを、NATといいます。この仕組みのおかげで、たくさんの機器が一つのグローバルアドレスを共有して、インターネットに接続できます。

たとえば、家のパソコンでホームページを見たいとします。まず、パソコンからホームページのサーバーへ、データが送られます。このデータは、まず家の網の出口にある機械(ルータ)に届きます。ルータは、パソコンのプライベートアドレスと、どの窓口(ポート番号)からデータを送ったかを覚えておきます。そして、プライベートアドレスをルータが持っているグローバルアドレスに変換し、窓口番号も別の番号に変えます。こうすることで、家の外からは、どのパソコンから送られたデータかは分からなくなります。

変換されたデータは、インターネットを通ってホームページのサーバーに届きます。サーバーからの返事は、ルータのグローバルアドレスと、変換された窓口番号に送られてきます。ルータは、届いたデータの窓口番号を見て、どのパソコンに送り返せばよいかを判断します。そして、グローバルアドレスを元のプライベートアドレスに戻し、窓口番号も元の番号に戻して、パソコンに返事を届けます。

このように、NATは、プライベートアドレスをグローバルアドレスに変換することで、限られた数のグローバルアドレスをたくさんの機器で共有することを可能にしています。また、家の網の中にあるパソコンのプライベートアドレスを外から隠すことで、安全性を高める役割も担っています。

NATの仕組み

NATの利点

NATの利点

ネットワークアドレス変換、いわゆるNATには、たくさんの良い点があります。まず第一に、世界中で使える住所であるグローバルIPアドレスを節約できることです。インターネットに繋がる機器全てにグローバルIPアドレスを与える必要がないので、数が限られている貴重なIPアドレス資源を有効に使うことができます。たとえば、会社や家庭の中にたくさんのパソコンやスマホなどの機器があっても、NATを使うことで、それら全てにグローバルIPアドレスを割り当てることなく、インターネットに接続できます。

次に、NATは安全性を高める役割も果たします。家のネットワークのような限られた範囲で使うプライベートIPアドレスは、インターネットから直接アクセスできません。そのため、外部からの攻撃から、ネットワーク内の機器を守ることができるのです。NATは、家の塀のような役割を果たし、外からの不正な侵入を防ぎます。これにより、ネットワーク内部の機器はより安全にインターネットを利用できます。

さらに、NATには、ネットワークの構成を変えずに済む利点もあります。インターネットに接続するためのグローバルIPアドレスが変わったとしても、NATを使っていれば、家のネットワーク内部の設定を変える必要はありません。これは、インターネットの接続業者を変えた時などにとても便利です。たとえば、引越しなどでインターネットの接続業者を変えても、家のネットワーク内の機器の設定はそのまま使えるので、面倒な設定変更の手間が省けます。

このように、NATは、IPアドレスの節約、安全性向上、設定変更の手間削減など、様々な利点を持っています。これらの利点により、NATは現代のインターネットにおいて不可欠な技術となっています。

NATのメリット 説明
グローバルIPアドレスの節約 インターネットに繋がる機器全てにグローバルIPアドレスを割り当てる必要がなく、貴重なIPアドレス資源を有効活用できる。
セキュリティの向上 プライベートIPアドレスはインターネットから直接アクセスできないため、外部からの攻撃からネットワーク内の機器を保護する。
ネットワーク構成変更の手間削減 グローバルIPアドレスが変更されても、ネットワーク内部の設定変更は不要。

NATの種類

NATの種類

ネットワークアドレス変換(NAT)には、幾つかの種類があります。それぞれの特徴を踏まえ、ネットワーク環境に合わせて適切な方式を選ぶことが重要です。代表的なNATには、静的NAT、動的NAT、そしてネットワークアドレスポート変換(NAPT)があります。

静的NATは、内部の機器に割り当てられたプライベートアドレスと、外部に公開するグローバルアドレスを1対1で固定的に結びつける方式です。この方式は、内部の特定の機器を外部から常にアクセスできるようにしたい場合、例えば、社内にあるウェブサーバーを外部に公開する場合などに適しています。設定が単純である一方、利用できるグローバルアドレスの数だけ内部機器を公開できるため、グローバルアドレスが限られている環境では不向きです。

動的NATは、内部の機器が外部にアクセスする際に、利用可能なグローバルアドレスの中から空いているものを動的に割り当てる方式です。静的NATとは異なり、内部の機器が常に同じグローバルアドレスを使用するとは限りません。グローバルアドレスの数が内部機器の数よりも少ない場合に有効ですが、外部から内部の特定の機器へアクセスするには、動的に割り当てられたグローバルアドレスを知る必要があるため、外部からのアクセス開始には不向きです。

家庭や小規模な事業所で最もよく使われているのがNAPTです。これは、複数の内部機器で一つのグローバルアドレスを共有し、ポート番号を使って個々の通信を区別する技術です。限られたグローバルアドレスを有効活用できるため、インターネットへの接続を広く普及させる上で重要な役割を果たしてきました。この方式では、内部の機器はグローバルアドレスを直接使用せず、NAPT対応機器がアドレス変換とポート番号の管理を行うため、セキュリティの向上にも繋がります。

NATの種類 アドレス変換方式 メリット デメリット 用途例
静的NAT プライベートアドレスとグローバルアドレスを1対1で固定的に対応 設定が単純。内部機器を外部から常にアクセス可能。 利用できるグローバルアドレスの数だけ内部機器を公開できるため、グローバルアドレスが限られている環境では不向き。 社内ウェブサーバーの外部公開
動的NAT 内部機器が外部アクセス時に利用可能なグローバルアドレスを動的に割り当て グローバルアドレスの数が内部機器の数よりも少ない場合に有効。 外部から内部の特定機器へのアクセスには、動的に割り当てられたグローバルアドレスを知る必要がある。 グローバルアドレスが限られている環境
NAPT(ネットワークアドレスポート変換) 複数の内部機器で1つのグローバルアドレスを共有、ポート番号で通信を区別 限られたグローバルアドレスを有効活用できる。セキュリティの向上。 家庭、小規模事業所

NATの課題

NATの課題

ネットワークアドレス変換、略してNATは、インターネットへの接続を共有するための便利な技術です。複数の機器が一つの広域IPアドレスを使ってインターネットに接続できるため、限られたIPアドレスを有効活用できます。しかし、便利な反面、いくつかの問題点も抱えています。その一つが、機器同士が直接やり取りするタイプの通信への影響です。例えば、データのやり取りを直接行う仕組みのテレビ電話や、複数人で同時に遊ぶ仕組みの対戦型ゲームなどは、NATの影響を受けやすく、正しく動作しないことがあります。これらの仕組みは、お互いの機器の住所にあたるIPアドレスを直接使ってデータのやり取りを行います。NATはこのIPアドレスを変換してしまうため、データが正しい相手に届かなくなり、結果として通信がうまくいかないのです。このような問題を避けるためには、特定の宛先への通信を許可する設定や、機器同士が自動で接続設定を行う仕組みなどを利用する必要があります。

NATのもう一つの問題は、ネットワークの状況把握を難しくすることです。インターネット上でのデータの流れは、送り状が付いた荷物に例えることができます。送り状には、荷物の送り元と送り先の住所が書かれています。NATはこの送り状の住所部分を書き換えてしまうため、どこからどこへデータが流れているのかを正確に追跡することが難しくなります。これは、ネットワークの不具合の原因究明を複雑にします。例えば、データの遅延が発生した場合、その原因がNATによるものなのか、それとも他のネットワーク機器によるものなのかを特定するのが困難になります。さらに、NATはセキュリティ対策にも影響を及ぼします。NATは、外部から内部の機器への直接アクセスを制限するため、一種の防火壁として機能します。しかし、これは同時に、内部の機器が外部の特定のサービスを利用する際に支障をきたす可能性もあります。NATの導入は、利便性と引き換えに、これらの課題への対処が必要となることを意味します。

メリット デメリット 対策
複数の機器が一つの広域IPアドレスを使ってインターネットに接続できる P2P通信への影響 (テレビ電話、対戦型ゲームなど) 特定の宛先への通信を許可する設定、機器同士が自動で接続設定を行う仕組み
ネットワークの状況把握を難しくする
セキュリティ対策への影響 (内部機器が外部サービス利用時に支障)

まとめ

まとめ

複数の機器で一つのインターネット上の住所を共有するための技術、それがネットワークアドレス変換です。この技術のおかげで、限られたインターネット上の住所を節約しながら、多くの機器をインターネットに接続することが可能になっています。

家庭や会社で複数のパソコンやスマートフォンなどをインターネットに繋ぐ場面を想像してみてください。それぞれの機器が個別にインターネット上の住所を持つとなると、膨大な数の住所が必要になってしまいます。ネットワークアドレス変換はこの問題を解決し、一つのインターネット上の住所を複数の機器で共有することを可能にします。これにより、インターネット上の住所を節約できるだけでなく、機器の購入費用を抑えることにも繋がります。

さらに、ネットワークアドレス変換は安全性を高める役割も担っています。インターネット上の住所を直接公開しないことで、外部からの不正アクセスから機器を守ることができます。これは、家の壁が外部からの侵入を防ぐのと似ています。家の内部は見えないため、安全性が確保されるのです。

また、ネットワークアドレス変換は、ネットワークの構成を柔軟にするという利点もあります。機器の接続や変更を簡単に行うことができ、ネットワーク管理者の負担を軽減します。これは、家の間取りを変えるようなものです。ネットワークアドレス変換があれば、機器の配置換えも容易になります。

しかし、ネットワークアドレス変換にもいくつかの課題があります。例えば、一部の機器や機能との相性が悪い場合があります。また、問題が発生した場合、原因究明が複雑になることもあります。これは、家の配線が複雑だと、問題が発生した際に原因を特定するのが難しいのと似ています。

このように、ネットワークアドレス変換には利点と課題の両方があります。ネットワークアドレス変換の仕組みや特徴を理解することで、ネットワークをより効率的に活用し、快適なインターネット環境を構築することができます。

項目 説明 例え
役割 複数の機器で一つのインターネット上の住所を共有
メリット
  • インターネット上の住所を節約
  • 機器の購入費用を抑える
  • 安全性の向上(外部からの不正アクセス防止)
  • ネットワーク構成の柔軟性向上
  • 家の壁(セキュリティ)
  • 家の間取り変更(柔軟性)
デメリット
  • 一部の機器や機能との相性問題
  • 問題発生時の原因究明の複雑化
家の配線の複雑化