FDMA：懐かしい？携帯電話の通信方式

FDMA：懐かしい？携帯電話の通信方式

通信方式の基本

私たちは日々、電話やインターネットなど、様々な通信技術を利用しています。これらの技術は、私たちの生活を便利で豊かなものにしてくれますが、その裏では、情報を相手に届けるための様々な工夫が凝らされています。情報を正しく伝えるためには、「通信方式」と呼ばれる、情報をどのように送受信するかを決めるルールが必要です。

通信方式には、大きく分けて「有線通信」と「無線通信」の二つがあります。「有線通信」は、電線や光ファイバーなどのケーブルを使って情報を送受信する方法です。一方、「無線通信」は、電波を使って情報を送受信する方法です。

例えば、固定電話や光回線インターネットなどは「有線通信」を、携帯電話や無線LANなどは「無線通信」を利用しています。このように、通信方式によって、利用できる場面や伝送速度、費用などが異なります。

さらに、情報を送受信する方法には、「単方向通信」と「双方向通信」があります。「単方向通信」は、一方的に情報が送られるだけで、受信側が情報を送り返すことができない方式です。一方、「双方向通信」は、情報の発信と受信を同時に行うことができる方式です。

例えば、テレビ放送は「単方向通信」ですが、電話やインターネットは「双方向通信」です。このように、通信技術の裏には、様々な通信方式が使われており、状況に応じて最適な方法が選択されているのです。

FDMAとは

– FDMAとはFDMAは「周波数分割多重接続」の略称で、無線通信で使われる技術の一つです。たくさんの人が同時に無線通信を利用できるようにする技術で、かつて日本で普及していた第1世代携帯電話（アナログ携帯電話）にも利用されていました。FDMAの仕組みは、高速道路に例えると分かりやすいでしょう。高速道路を複数の車線に分けて、それぞれの車線を異なる車が走行できるようにするのと似ています。FDMAでは、限られた周波数帯域を複数の小さな帯域に分割し、それぞれの帯域を異なる利用者に割り当てます。それぞれの利用者は、割り当てられた帯域だけを使って通信を行うため、お互いの通信が干渉することはありません。FDMAは、主にアナログ通信で使用される技術です。アナログ通信は、音声などの情報を波の形に変換して送受信する通信方式です。FDMAは、この波の形を分割して、複数の利用者が同時に通信できるようにします。FDMAは、理解しやすいシンプルな技術である一方、一度に利用できる人数が限られてしまうというデメリットもあります。そのため、近年では、より多くの利用者が同時に利用できるCDMAやTDMAといった技術が主流となっています。

FDMAの仕組み

– FDMAの仕組みFDMA（周波数分割多元接続）は、限られた周波数帯域を複数の利用者で同時に使用するための技術の一つです。その仕組みは、まるで大きな道路を複数の車線に分けることに似ています。FDMAでは、まず利用可能な周波数帯域全体をいくつかの小さな帯域に分割します。この小さな帯域一つ一つを「チャネル」と呼びます。それぞれのチャネルは異なる利用者に割り当てられ、各利用者は、割り当てられたチャネル内でのみ通信を行います。例えば、100MHzから200MHzまでの周波数帯域を10MHz幅のチャネルに分割すると、100MHz～110MHz、110MHz～120MHzと言ったように、全部で10個のチャネルを作ることができます。このように、周波数帯域をチャネルに分割することで、複数の利用者が同時に通信しても、お互いの電波が干渉し合うことを防ぐことができます。これは、道路を複数の車線に分けることで、車がスムーズに走行できるようになるのと同じです。FDMAは、携帯電話や無線LANなど、様々な無線通信システムで利用されています。FDMAは比較的シンプルな技術であるため、実装が容易でコストを抑えられるというメリットがあります。しかし、利用者数が増えると、一人あたりの利用できる周波数帯域が狭くなってしまうため、データ通信速度が低下するというデメリットもあります。

FDMAの長所

周波数分割多元接続、すなわちFDMAは、無線通信において複数の利用者が限られた周波数帯域を共有するための技術の一つです。FDMAの最大の特徴は、システムの仕組みが単純で、導入しやすいという点にあります。これは、FDMAがそれぞれの利用者に特定の周波数帯域を割り当てるという、わかりやすい方法を採用しているためです。

FDMAでは、各利用者にはそれぞれ専用の周波数帯域が与えられます。このため、利用者は割り当てられた帯域内では他の利用者の影響を受けることなく、自由に通信を行うことができます。これは、音声通話のように、常に一定の周波数帯域を必要とする通信において特に有効です。なぜなら、他の利用者の通信状況によって音質が変化したり、通信が途絶えたりする心配がないからです。

このように、FDMAはシンプルな構造と安定した通信品質という利点から、初期の無線通信システムにおいて広く普及しました。しかし、周波数帯域の利用効率という面では、他の多元接続方式と比べて劣るという側面もあります。

FDMAの短所

FDMAは、通信に使用する周波数を各ユーザーに固定的に割り当てる技術です。これは、複数のユーザーが同時に通信を行えるという利点がある一方、いくつかの短所も存在します。

まず、FDMAは周波数の利用効率が低いという点が挙げられます。FDMAでは、各ユーザーに特定の周波数帯域が割り当てられますが、そのユーザーが通信を行っていない場合でも、割り当てられた帯域は空いたままです。つまり、他のユーザーが通信したくても、空いている帯域があっても利用することができません。これは、限られた周波数資源を有効に活用できないという点で大きなデメリットと言えます。

また、データ通信など、通信量が時間によって大きく変動する場合にもFDMAは不向きです。FDMAでは常に一定の帯域が割り当てられるため、通信量が少ないときには多くの帯域が無駄になり、逆に通信量が多いときには帯域不足に陥る可能性があります。

さらに、ユーザー数の増加にも対応しにくいという問題もあります。FDMAでは、ユーザーごとに異なる周波数帯域を割り当てる必要があるため、ユーザー数が増えるほど、より多くの周波数帯域が必要になります。しかし、利用できる周波数帯域は限られているため、ユーザー数の増加は、新たなユーザーに周波数を割り当てることができなくなる、周波数不足の問題に直結してしまう可能性があります。

FDMAの利用例

– FDMAの利用例FDMAは、かつては広く使われていた技術で、身近なものではアナログ式の携帯電話や、テレビ、ラジオ放送など、様々な分野で活躍していました。しかし、時代が進むにつれて、電波の利用効率が高く、より多くの情報を送ることができる、TDMAやCDMAといった、新しい通信方式が主流になってきました。現在では、FDMAは限られた用途でしか使われていません。 一例として、災害時などに活用される防災無線や、航空機と管制塔の通信など、確実な接続が求められる場面で活躍しています。FDMAは、新しい技術が登場した現在でも、無線通信の基礎となる技術の一つです。FDMAの仕組みを理解することは、他のより複雑な通信方式を理解する上でも非常に重要です。FDMAは、電波を複数の周波数帯域に分割して利用するという、シンプルな考え方ながらも、無線通信の基本原理を学ぶ上で最適な教材と言えるでしょう。