VANとは?~かつての企業間ネットワーク~
ITの初心者
先生、「VAN」って最近あまり聞かない言葉だけど、どんなものだったんですか?
ITアドバイザー
良い質問だね!「VAN」は、昔インターネットが普及する前に、企業間でデータをやり取りするために使われていた通信サービスだよ。今のインターネット回線のようなものをイメージすると分かりやすいかな?
ITの初心者
インターネット回線みたいなものだったんですか!でも、どうして今はあまり使われなくなったんですか?
ITアドバイザー
インターネットの方が、安くて便利になったからだよ。インターネットが普及する前は、VANは画期的なサービスだったんだけどね。
VANとは。
「『付加価値通信網』は、普段使っている電話回線を使ってデータのやり取りをするサービスのことです。単にデータを送るだけでなく、コンピューターで情報を処理したり、データをためておいたりといった便利な機能も提供していました。日本では、1980年代後半に広く使われるようになりましたが、インターネットが普及するにつれて、あまり見かけなくなりました。」
VANの概要
– VANの概要VANとは、付加価値通信網(Value-Added Network)の略称です。企業間で安全かつ効率的にデータをやり取りするために広く利用されている通信サービスです。VANは、既存の電話回線などの通信回線を利用して構築されますが、単にデータを送受信するだけではありません。 VAN事業者は、独自のネットワークやコンピュータセンターを運用し、データ通信に加えて、様々な付加価値を提供しています。代表的な付加価値としては、以下のようなものがあります。* -高度な情報処理- 受信したデータをフォーマット変換したり、集計処理を行ったりすることができます。これにより、企業は自社システムに合わせた形でデータを受け取ることができ、業務効率化に繋がります。* -データの蓄積・変換- 大量のデータを一時的に保管したり、異なる形式のデータを変換したりすることができます。企業間でデータの形式が異なる場合でも、VANを通じてスムーズなデータ交換が可能になります。* -セキュリティ対策- データの暗号化やアクセス制御など、高度なセキュリティ対策が施されています。機密性の高い情報を扱う企業にとって、安全なデータ通信を実現する上で重要な役割を担います。このように、VANは単なる通信回線の提供にとどまらず、企業の業務効率化やセキュリティ向上に貢献する付加価値を提供している点が特徴です。近年では、インターネットの普及により、インターネットVPNなどの新たな通信サービスも登場していますが、VANは、その高い信頼性とセキュリティレベルから、特に金融機関や官公庁、大企業を中心に、依然として重要な役割を担っています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 企業間で安全かつ効率的にデータをやり取りするための付加価値通信網(Value-Added Network) |
特徴 | 既存の通信回線を利用し、独自のネットワークやコンピュータセンターで付加価値を提供 |
主な付加価値 | – 高度な情報処理(フォーマット変換、集計処理) – データの蓄積・変換 – セキュリティ対策(暗号化、アクセス制御) |
メリット | – 業務効率化 – セキュリティ向上 – スムーズなデータ交換 |
利用状況 | インターネットVPNなどの登場後も、高い信頼性とセキュリティレベルから金融機関、官公庁、大企業で利用 |
VANの普及
1980年代後半から1990年代にかけて、日本の企業は、受発注業務を効率化するために、電子データ交換(EDI)に注目し始めました。
EDIは、従来の紙によるやり取りと比べて、業務を大幅に効率化できる可能性を秘めていましたが、そのためには企業間で安全なデータ通信ネットワークを構築する必要がありました。
しかし、当時は企業がそれぞれ独自に専用回線を敷設してネットワークを構築するには、多額の費用がかかりました。
そこで登場したのがVAN(付加価値通信網)です。
VANは、企業間を専用回線ではなく、パケット交換網などの公衆回線を使って接続することで、低コストで安全性の高いデータ通信を実現しました。
このVANの登場により、EDIの導入が一気に進み、企業間における受発注業務の効率化が大きく進展しました。
時期 | 課題 | 解決策 | 効果 |
---|---|---|---|
1980年代後半~1990年代 | 受発注業務の効率化 | EDIの導入 →課題:安全なデータ通信ネットワーク構築に費用がかかる |
業務効率化 |
EDIの課題解決 | VANの登場 →公衆回線で低コスト&安全性の高いデータ通信を実現 |
EDI導入促進 →企業間受発注業務の効率化 |
VANのサービス内容
企業間で安全に情報をやり取りするためのネットワークであるVANは、様々な業界の企業が必要とする多様なサービスを提供してきました。
金融機関では、VANを通じてオンラインシステムに接続し、顧客の預金残高照会や振込などの取引をスムーズに行うことが可能になりました。
流通業界においては、VANは受発注データの交換を効率化し、在庫管理や配送の迅速化に貢献しました。メーカーと販売会社の間では、在庫情報をリアルタイムで共有することで、欠品や過剰在庫の防止に役立てられました。
企業内LANの接続サービスを提供するVAN事業者もあり、地理的に離れた拠点間でも、まるで一つのオフィスのように円滑な情報共有を実現しました。
さらに、メッセージ通信サービスにより、企業は取引先との間で、迅速かつ確実な連絡手段を確保することができました。
加えて、重要なデータのバックアップサービスを提供するVAN事業者も存在し、企業は災害や事故発生時にも、データの損失を防ぎ、事業の継続性を確保することが可能となりました。
業界 | VANのサービスとメリット |
---|---|
金融機関 | – オンラインシステムへの接続 – 預金残高照会や振込などの取引の効率化 |
流通業界 | – 受発注データ交換の効率化 – 在庫管理・配送の迅速化 – リアルタイムな在庫情報共有による欠品・過剰在庫の防止 |
全般 | – 企業内LANの接続による地理的に離れた拠点間の情報共有 – メッセージ通信サービスによる取引先との迅速かつ確実な連絡手段の確保 – データのバックアップサービスによる災害・事故発生時のデータ損失防止と事業継続性の確保 |
インターネットの台頭とVANの衰退
1990年代後半に入ると、インターネットが急速に普及し始めました。それと同時に、かつて企業間データ交換の主役として活躍していたVAN(付加価値通信網)は、次第にその存在感を薄めていくことになります。
一体なぜ、このような変化が起きたのでしょうか。それは、インターネットがVANに比べて多くの利点を持っていたためです。
まず、インターネットはVANに比べて通信コストが安く抑えられました。これは、企業にとって大きな魅力でした。
また、インターネットはVANのような閉じたネットワークではなく、誰でも自由に接続できる開かれた環境を提供していました。このため、多くの企業がインターネットへの移行を選びました。
さらに、インターネットの普及と並行して、セキュリティ技術も大きく進歩しました。暗号化や認証の技術が向上したことで、企業は機密性の高いデータも安心してインターネット上でやり取りできるようになったのです。
これらの要因が重なり、インターネットは企業間データ交換の新たな標準としての地位を確立していきました。そして、かつて隆盛を極めたVANは、その役割を終えようとしています。
項目 | VAN | インターネット |
---|---|---|
コスト | 高い | 安い |
接続性 | 閉じたネットワーク | 開かれたネットワーク |
セキュリティ | – | 技術の進歩により向上 |
普及率 | 1990年代後半から低下 | 1990年代後半から急増 |
結果 | 役割を終えようとしている | 企業間データ交換の新たな標準 |
現在のVAN
– 現在のVANかつて企業間データ交換の要として活躍したVANですが、現在ではその利用状況は変化しつつあります。既存システムとの連携やセキュリティ面の安心感から、現在もVANを使い続ける企業は少なくありません。長年使い慣れたシステムを変えるには、コストや手間がかかるため、すぐに新しい仕組みに移行することが難しい企業も多いでしょう。また、VANは閉鎖的なネットワーク構成を持つため、セキュリティレベルが高いという点も魅力の一つとなっています。しかし、近年ではクラウドサービスをはじめとする、より柔軟で低コストなネットワークサービスが登場しており、VANから移行する企業も増えています。クラウドサービスは、インターネット経由で必要な機能を必要なだけ利用できるため、従来のVANに比べてコストを抑えられる点が大きなメリットです。また、場所や時間に縛られずに利用できるという点も、多くの企業にとって魅力的です。このように、VANは現状維持ではなく、時代の流れとともに変化を迫られています。今後は、既存のVANの強みを活かしつつ、クラウドサービスなどの新しい技術を取り入れていくことで、企業のニーズに対応していく必要があると言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
現状 | – かつて企業間データ交換の要として活躍 – 既存システムとの連携やセキュリティ面の安心感から、現在も利用する企業は少なくない – 長年使い慣れたシステムを変えるにはコストや手間がかかる |
課題 | – クラウドサービスなど、より柔軟で低コストなネットワークサービスが登場 – VANから移行する企業が増加 |
クラウドサービスのメリット | – インターネット経由で必要な機能を必要なだけ利用できるため、コストを抑えられる – 場所や時間に縛られずに利用できる |
今後の展望 | – 既存のVANの強みを活かしつつ、クラウドサービスなどの新しい技術を取り入れていく – 企業のニーズに対応していく必要がある |