
機器制御の共通語:ATコマンド
今では、電話や時計、家電など、身の回りの様々な機器がネットワークにつながり、互いに情報をやり取りするのが当たり前になっています。このような、機器同士がつながる技術が発展した背景には、様々な要因がありますが、機器を制御するための命令体系である「ATコマンド」の登場は、特に重要な出来事と言えるでしょう。
ATコマンドは、元々、パソコンと電話回線をつなぐ「モデム」と呼ばれる機器を操作するために開発されました。かつて、インターネットに接続するためには、電話回線を使ってモデムと接続する必要がありました。このモデムを制御するために使われていたのがATコマンドです。「AT」とは「注意」を意味する英語の「Attention」の略です。このコマンドは、非常に簡潔で分かりやすく、様々な機器で応用しやすいという特徴を持っていました。そのため、モデム以外にも、様々な通信機器で利用されるようになり、瞬く間に業界の標準規格として普及しました。
ATコマンドを開発したのは、ヘイズコンピュータープロダクツという会社です。この会社は、当時としては画期的なモデムを開発し、市場で大きな成功を収めました。そして、このモデムの制御に使われていたATコマンドもまた、広く普及し、現代の通信技術の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。ヘイズコンピュータープロダクツの技術者たちは、将来、様々な機器がネットワークでつながる時代が来ることを予見していたのかもしれません。まさに、時代を先取りした慧眼と言えるでしょう。ATコマンドは、現代社会を支える通信技術の陰の立役者として、これからも重要な役割を担っていくと考えられます。