
デジタル化の立役者:AD変換器
私たちの周りには、温度計の水銀柱の上昇や、楽器から奏でられる音色、太陽や電灯の明るさの変化など、連続的に変化する量がたくさんあります。これらはアナログ信号と呼ばれ、滑らかに変化するのが特徴です。一方、コンピュータは、0と1の離散的な値、つまり飛び飛びの値で情報を処理します。この0と1の組み合わせで表される信号をデジタル信号と言います。
コンピュータでアナログ信号を扱うには、アナログ信号をデジタル信号に変換する必要があります。この変換を行う装置が、アナログ・デジタル変換器、略してAD変換器です。AD変換器は、連続的に変化するアナログ信号を、一定の時間ごとに切り取って数値化します。この切り取る操作をサンプリングと言い、切り取る時間間隔をサンプリング周期と言います。サンプリング周期が短いほど、元のアナログ信号をより細かく捉えることができます。
AD変換器は、サンプリングしたアナログ信号の大きさを、0と1のデジタル値に変換します。このデジタル値は、2進数と呼ばれる数え方を使って表現されます。例えば、0ボルトから5ボルトの間で変化する電圧をデジタル化する場合、電圧が0ボルトならデジタル値は0、5ボルトならデジタル値は最大値となり、その間の電圧は段階的にデジタル値に変換されます。
身近な例では、デジタル温度計が挙げられます。温度計のセンサーは、温度変化に応じて抵抗値が変化する部品で、温度をアナログ信号として検知します。デジタル温度計にはAD変換器が内蔵されており、このアナログ信号をデジタル信号に変換することで、液晶画面に数値として表示できるのです。AD変換器は、私たちの身の回りの様々な機器で使われており、現実世界とデジタル世界を繋ぐ重要な役割を担っています。