
電子立国を支えたJEIDAの功績
昭和33年(1958年)は、日本にとって大きな転換期でした。戦後の焼け跡から立ち上がり、経済の復興に力を注いできた日本は、新たな成長のエンジンとなる産業を必要としていました。そして、世界的に注目を集め始めていたのが、エレクトロニクス産業です。小さな部品であるトランジスタや、情報処理を担うコンピュータは、未来を担う技術として期待を集めていました。しかし、当時の日本のエレクトロニクス技術は、欧米諸国に大きく水をあけられていたのが現状でした。トランジスタやコンピュータといった最先端の技術は、ほとんどが輸入に頼っており、国産技術の育成は急務であり、国際的な競争力を強化することが日本の未来にとって不可欠でした。
このような状況を打破するために、産業界、政府、そして大学などの研究機関が一体となって、電子工業の発展を後押しする必要性が高まりました。そこで、電子工業の振興を目的とした中核的な組織として、日本電子工業振興協会(JEIDA)が設立されることになりました。JEIDAは、産官学の協力を推進することで、技術開発や製品の標準化、そして国内外への市場開拓などを支援する役割を担いました。具体的には、研究開発プロジェクトへの資金援助や、技術情報の交換、展示会の開催などを通して、企業の技術革新を促し、業界全体の底上げを目指しました。また、標準規格の策定により、製品の互換性を高め、市場の拡大を図りました。さらに、海外の関連団体との交流を深めることで、国際的な競争力を強化するための取り組みも積極的に行いました。JEIDAは、日本の電子工業の未来を担うという強い使命感を持って、その活動をスタートさせたのです。